平成29年度 文部科学省 大学の世界展開力強化事業 採択プログラム (令和3年度終了)

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【日露学術フォーラム】オンラインセミナー「日露高等教育における先住民族の言語と文化」

以下はセミナー主催者のジェフリー・ゲーマン教授(メディア・コミュニケーション研究院 多元文化教育論分野)による報告です。

報告:

2021年9月15日、日露学術フォーラムの一環としてオンラインセミナー「日露高等教育における先住民族の言語と文化」を開催しました。主催は北海道大学、モスクワ国立大学、日露大学協会で、日露経済協力・人的交流に資する人材育成プラットフォーム(HaRP)専門セクション「SDGs: 環境・資源開発・多文化教育」、北東連邦大学(ヤクーツク)、北海道大学メディア・コミュニケーション研究院、教育学院の共催で実施しました。本セミナーは持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指して日露間の学術交流の推進を図る日露学術フォーラムにおける4つのセッションの1つとして開催されました。また、専門セクション「SDGs:環境・資源開発・多文化教育」の日本側参加者とロシア側カウンターパートが協力して開催した、以下のセミナーの結果を踏まえています。

  1. 「寒冷地セミナー セッション4:人文社会(持続可能な発展のための教育と先住民族の表象)」(2019 年 9 月 27 日にヤクーツク市で北方の持続可能な開発フォーラムのサイドイベントとして開催)。
  2. 「先住民族のメディア:発展戦略」(2020 年 9 月 29 日に北方の持続可能な開発フォーラム/寒冷地セミナーとオンラインで併催)。
  3. オンラインワークショップ「アジア太平洋地域とロシア極東の先住民族―文化的アイデンティティとメディア―」(2021 年 2 月 12 日にオンラインで開催)。

これらのセミナーならびに9月15日のセミナーは、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を目指して日露の大学間の協力を強化し、先住民族の文化振興に寄与するとともに、SDGs の達成に向けて先住民族との連携を強化するという共通の目的を掲げています。9月15日のセミナーの目的は、日露両国の先住民族のための高等教育の現状と展望、特に既存の教育モデル が先住民族の言語教育と研究、ひいては SDGs の達成にどの程度貢献しているかについて議論することでした。セミナーには、日本、ロシア、スペイン、フィンランド、カナダから約65名が参加しました。

発表とコメントは北海道大学のジェフリー・ゲーマン、加藤博文、ゲルツェン名称ロシア国立教育大学のアレクサンドル・ペトロフ、北東連邦大学(ヤクーツク)のワルワラ・ベロリュブスカヤ、モスクワ国立大学のビクトル・カルロフ、セルゲイ・タテウォソフの6名が担当しました。また、北東連邦大学のレーナ・シドロワが司会を務めました。このうちベロリュブスカヤ教授はロシアの少数民族出身です。

セミナーでは、先住民族・少数民族の社会進出を目的として現在の日本(特に北海道大学)で適用されている教育モデルの概要が紹介され、様々な知識体系を統合した輪郭が明確になりました。その後、ロシアの少数民族のための高等教育における研究と社会進出策の比較に話が及びました。モスクワ国立大学からは、西洋社会科学の視点で見たロシアの少数民族に関する言語学・民族学的研究の歴史と現状について概要紹介がありました。また、ゲルツェン名称ロシア国立教育大学と北東連邦大学 ロシア北東民族言語文化研究所 北方言語学部からは、少数民族の言語と文化の教育支援・研究支援の歴史と現状について発表がありました。

セミナー全体を通して、少数民族として母語や文化を専門とする研究者と、非少数民族として同じテーマを扱う研究者が一つの国家の共通のインフラの下で研究を行う際、少数民族の研究者の場合は当事者のみが知り、経験し得る感情的な要素によって、西洋の社会科学的手法が提供する客観的視点が増強されることが示唆されました。また、言語学や民族学は、少数民族の言語や文化の維持と振興を支援するプロジェクトに大きく貢献するのみならず、先住民族や少数民族自身が言語や文化の研究と教育を行う上でも不可欠です。

動画(YouTube)

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