2021年9月第3週に,第3回日露大学協会総会(第9回日露学長会議),ならびにその関連イベントを開催しました。
日露大学協会総会(日露学長会議)
9月16日(木)に「第3回日露大学協会総会(第9回日露学長会議)(以下,「総会」)」がオンラインで開催されました。今回の総会は新潟大学がホストとなり,日本側29大学,ロシア側26大学から,140名が参加しました。また,本総会開催にあたって,日本側3大学(日本経済大学,名古屋外国語大学,鳥取大学),ロシア側6大学(北西国立医科大学,ヴォルゴグラード国立大学,モスクワ国立言語大学,モスクワ市立大学,アストラハン国立大学,サンクトペテルブルク国立建築土木大学)が新たに日露大学協会に加盟し,加盟校は日本側30大学,ロシア側33大学,計63大学となりました。
総会では,新潟大学 牛木 辰男 学長,モスクワ国立大学 ヴィクトル・サドーヴニチィ学長の開会挨拶の後,文部科学省丸山洋司文部科学審議官,ロシア科学・高等教育省ナタリア・ボチャロワ副大臣,上月 豊久 駐ロシア日本国特命全権大使及びミハエル・ガルージン駐日ロシア連邦特命全権大使から来賓挨拶があり,続いて北海道大学の寳金総長とモスクワ国立大学のサドーヴニチィ学長が日露大学協会の活動状況などについて基調講演を行いました。学長からの事例報告・討議では,6大学(東海大学,東京外国語大学,金沢大学,太平洋国立大学,北方(北極圏)連邦大学,イルクーツク国立大学)から,学生交流と専門人材育成についての取り組みが紹介され,その後,学長等間で意見が交わされました。総会の後半では,同一週に開催されたサイドイベントである日露学生フォーラム及び日露学術フォーラムの成果報告が行われました。会議の最後に採択されたコミュニケでは,学生や若手研究者の交流促進,社会的要求や世界的課題に対応する科学技術やイノベーションを推進するため,異分野融合研究や産学連携を強化すること,日露の友好関係,交流活動の進展に向け,今後も一層の努力を続けることが関係者間で合意され,寳金総長,サドーヴニチィ学長及び牛木学長の3者により,コミュニケへの署名が行われました。 なお,次回の総会は2023年にモスクワで開催される予定です。
日露学生フォーラム
9月12日(日)~13日(月)には“Crossing All Boundaries and Sharing Your Ideas”をスローガンに日露学生フォーラムが開催され,日本側21大学,ロシア側31大学より128名の学生が参加しました。参加者はまず日露の文化,地域紹介,学生プロジェクトや地球課題などについて発表や意見交換を行う「文化交流セッション」に参加しました。学生自身がモデレーターを務め17名の学生から発表が行われた後,意見交換が行われました。その後,学生の希望に応じて「医歯薬学」「自然科学」「社会科学」「人文科学」のそれぞれの専門セッションに分かれ,各担当教員のコーディネートのもとでワークショップなどが行われ,専門分野の交流を深めました。2日目の最後には参加学生が再度集まり,各専門セッションの成果発表や日露の学生代表による総括が行われ,フォーラムは盛会の内に終了しました。2日間の英語による活発な意見交換を通して,参加学生からは,「大変有意義なフォーラムで多くの友人を作ることができた」「次は対面でこういったイベントに参加したい」と言った声が多く聞かれました。
日露学術フォーラム
9月14日(火)~15日(水)に,SDGs及び医学教育の2つの分野で計5つの日露学術フォーラムが開催されました。
SDGs分野
第3回日露大学協会総会の開催にあたり,北海道大学はモスクワ大学と連携して, SDGsの達成を目指して日露間の学術交流の推進を図るべく,「SDGs」をテーマとして4つの学術フォーラムを実施しました。
まず,9月14日に開催した,日露オンラインセミナー「持続可能な地域開発,国際協力,北極圏の環境保護」では,7カ国より研究者や官公庁等の実務者約100名が参加し,ロシアにおける環境意識の向上と,北極圏の脆弱な環境のモニタリングと保護に貢献している地元の人々や組織の活動について,議論が交わされました。さらに,発表者は,環境と先住民の伝統的な生活様式とのつながりを明確にするとともに,環境立法と先住民の権利の保障がどのように連動してきたのかに着目しました。後半の発表では,地域経済と都市づくりのさまざまなモデル,世界的な脱炭素化に向けた取り組みが北極圏の持続可能な開発に与える影響や,地球温暖化が北極圏における国際関係に与える影響等を論じました。今後も,このようなセミナーの実施により,持続可能な開発や北極圏の環境保護について,マルチレベルガバナンス,国境を越えた協力に向け取り組んでいく予定です。
続いて,9月15日には3つのフォーラムを開催しました。
オンラインセミナー「日露高等教育における先住民族の言語と文化」では,先住民族の文化振興とSDGsの達成に向けた先住民族との連携をさらに強化することを目的として実施しました。本セミナーには,10カ国より約50名が参加しました。このセミナーでは,日露の大学における言語学・民族学研究の歴史と現状,少数民族言語・文化の教育・研究支援体制の歴史と現状についての発表が行われました。発表を行った研究者は,先住民や少数民族自身が自らの母語や文化の研究・教育に関わることの重要性を確認しました。先住民族・少数民族ではない研究者と,先住民族・少数民族の個人やコミュニティとの協働に向け,国境を越えた協力体制を構築するための対話を継続して実施する予定です。
オンラインセミナー「子どもの健康と成長」では,日露より30名が参加し,SDGs目標3に掲げられている「すべての人に健康と福祉を」の実現に向けて,特にロシアと日本の次世代の子どもたちの成長,栄養,健康に焦点を当て,より良い健康的な生活へと移行していくためのライフスタイルについて議論しました。この実現に向けて,身長や体重,肥満や痩せを評価するのみならず,社会や文化,身体観も含めて包括的に子どもの健康を考えてくことが重要であるという結論に至りました。また,今後も日露の大学が緊密に連携していくことを確認しました。
日露オンラインセミナー「生態系モニタリングにおける日露協力」では,SDGs目標13「気候変動に具体的な対策を」と15「陸の豊かさも守ろう」を念頭に置き,北方圏の生態系のリモートセンシングによるモニタリングより,持続可能な森林管理のためのエビデンスベースの解決策をいかに導きだすかを議論しました。このセミナーには, 9カ国から60名以上の大学教員・学生等が参加しました。このセッションでは,日本・ロシア・イギリスの研究者が発表を行い,北方圏の生態系のモニタリングの精度向上に求められる,長期的なフィールド観測データと地理空間データ,特にリモートセンシングによるデータの重要性が論じられました。また,高度なマルチセンサーデータ,機械学習や「ディープラーニング」等を用いることで,近い将来,新しい発見をもたらすことも示され,今後,日本・ロシア・イギリス間の新たな研究連携が期待されます。
- Online Workshop “Sustainable Regional Development, International Cooperation and the Protection of the Arctic Environment”(日露オンラインセミナー「持続可能な地域開発,国際協力,北極圏の環境保護」)
概要 報告 - Online Workshop “Language and cultures of ethnic minorities in higher education in Russia and Hokkaido”(オンラインセミナー「日露高等教育における先住民族の言語と文化」)
概要 報告 - Online Workshop “Child Health and Growth”(オンラインワークショップ「子どもの健康と成長」)
概要 - Online Workshop “Japan-Russia Collaboration for Ecosystem Monitoring”(日露オンラインセミナー「生態系モニタリングにおける日露協力」)
概要 報告
医学教育分野
9月15日に「医学教育」をテーマに新潟大学主催によりフォーラムが開催されました。
フォーラムでは,新潟大学染矢俊幸医学部長らによる開会挨拶の後,新潟大学牛木辰男学長と新潟県労働衛生医学協会成澤林太郎医師らによる日露医学交流のこれまでの歩みについて基調講演が行われました。その後,「学部教育と国際交流」「大学院教育と研究」のテーマ別に日露計11名の研究者から国際教育の最新事例や最先端の研究成果の報告が行われました。
- Japan-Russia Scientific Forum on Medical Education
概要
関係情報
第3回日露大学協会総会・ 日露学生フォーラム ・ 日露学術フォーラム の概要について
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